ココロといっぱい #2「クッキングココロ」
ココロSSの第2話です。
今回は料理編です。
今回は料理編です。
ひょんなことから、人間の世界について学ぶためにやってきたブログ妖精、ココロとの生活をすることとなったシン。
かわいらしい妖精との「萌え」な生活が過ごせるものだと、シンは喜びを膨らませていた。
しかし実際は、そんな喜ばしい生活ではなかった。
ブログ妖精ココロ。
シンはココロが、メイド級の家事をこなせるものだと思っていた。
しかし一緒に生活する日々が重なるに連れて、ココロの問題が浮き彫りとなってきた。
それはココロと一緒の生活を始めて、最初の月曜日の朝だった。
大学登校のため、シンは眼を覚ました。だが料理をする音を耳にして、彼はココロの部屋にあるキッチンに向かった。
そのキッチンではココロが料理を行っていた。箱が用意されていたことから、彼女は昼食の弁当を作っているのだと、シンは思った。
「おはよう、ココロちゃん。お弁当を作ってるの?」
シンがココロに挨拶をして、彼女の料理の具合を確かめた。だが眼にした異様な事態に、彼は戦慄を覚えた。
ココロが手にしているフライパンの中にあったのは、明らかに料理とはいえなかった。もはや調理の失敗、いや、料理そのものの次元を超えていた。
色は美味しさからかけ離れた不味さや毒気のある青紫。ビンや歯ブラシといった、どう煮ても焼いても食べられないものまで混じっていた。
「コ、ココロちゃん・・これは、何なの・・・?」
「えっと・・お弁当用の卵焼きを作ろうとしたのですが・・失敗しちゃったみたいです・・」
「ひとつ、聞いてもいいかな?・・ココロちゃんがやっているの、料理、だよね・・・?」
「はい。シンさんのためにお弁当を作ろうと思いまして・・」
シンの質問に、ココロが満面の笑みを浮かべて答える。その彼女の言葉に、シンは押し隠していた感情を爆発させた。
「ぜんっぜん料理じゃないって!これのどこが卵焼きなんだ!?どうやったらこんな美味しさのかけらもない青紫色に染め上がるんだ!?」
「えっ!?やっぱり失敗してたんですか!?」
「これのどこが成功なんだよ!?第一、どう煮ても焼いても食べられないものが混じってるじゃないか!ビンやら歯ブラシやら!」
「えっ!?食べられないんですか!?てっきり人間はそういうものを食べられるものかと思っていたのですが・・」
「ココロちゃん・・人間をバケモノみたいに思ってるでしょ・・・?」
ココロの言葉に対して、シンは愕然となっていた。ココロも失敗していると自覚しているため、困惑を浮かべるばかりだった。
結局、シンが登校する時間までにココロのお弁当作りが成功することはなかった。成功したのは、彼が登校してから1時間以上たってからのことだった。
シンが大学での講義を終えて、アルバイトに精を出していた頃、ココロは夕食作りに励んでいた。しかし包丁で材料を切っている最中に自分の指を傷つけてしまうなど、悪戦苦闘が続いていた。
そして調理に取り掛かってからしばらくして、シンがアルバイトから帰ってきた。
「おかえりなさい、シンさん♪今、夜ご飯を作っているところです♪」
挨拶をしてくるココロに、笑みをこぼすシン。だが彼のその笑みがすぐに顔から消える。
シンは今朝の調理を思い返していた。あの料理の失敗の連続を見せられては、不安を感じずにはいられなかった。
(だけど、ここで疑いを持ってしまったら、ココロちゃんに悪いし・・)
しかしシンはココロの優しさを信じることにした。
「ココロちゃん、何を作ってるの?」
「えっとですね・・カレーを作ろうとしたのですが・・その、あの・・・」
シンが訊ねると、ココロが答えを詰まらせる。視線を移した彼は、恐ろしいものを目の当たりにした。
それは明らかに失敗作だった。しかも想像を絶するほどの。
ひとつは皿の上に溶岩が盛られていた。これほどの熱に皿が溶けないのが不思議なくらいである。
もうひとつは完全に炭になっていて、元が何なのか全く分からない状態になっていた。形状が土偶のように見えるのが不気味だった。
「ココロちゃん・・これはいったい・・・!?」
「その、あの・・調理に失敗して、こんなことに・・・」
「どうしてこんなことになるんだよ!?いくら失敗したからって、こんなマグマができるなんておかしいだろ!」
「ですけど・・次元が違うと調整がむずかしいんですよ!」
「何の次元だよ!?料理にどんな次元の違いが出て来るんだよ!?」
ココロの言い訳にたまらず反論するシン。
「ココロちゃん、ちょっと聞くけど・・・作っている最中にちゃんと味見している・・・?」
「味見?してませんけど、何か問題でも?」
「味見しろ!ちゃんと味見しないから、いつも失敗ばかりするんじゃないか!」
「だってだって!シンさんのために作っているものですから、シンさんに1番に食べてほしいんです!ココロが口を挟んではいけないでしょう・・」
「僕のために精魂込めて作ったのがコレなのか!?僕を病院送りか即死させるつもりがないんだったら、ちゃんと味見しないとダメだって!」
シンはココロに言い放つと、失敗作のひとつを手にした。
「ちゃんと自分の腕前を自覚してもらうために、この失敗した料理を食べなさい。一口だけでも。」
「え、遠慮しておきます・・・」
「自分が“精魂込めて”作ったものだよね?自分が食べても美味なんだよね?少なくとも不味いなんてことはないよね?」
「これはシンさんのために作ったものです!ココロが食べるわけには・・!」
「僕のためだったら、僕がこうして勧めれば、食べないわけにいかないよね?」
「ダメです、ダメです、ダメです!絶対にダメです!」
頑なに拒否し続けるココロだが、シンは不気味に笑うばかりだった。
「本当にお願いします!それだけは、それだけはご勘弁を!」
「さぁ。自分のご自慢の味を存分に堪能するがいい。フフフフフ・・」
大きく首を横に振るココロだが、シンに届くことはなかった。直後、彼女の声にならない悲鳴が轟いた。
自分の失敗した料理をシンに食べさせられたココロ。その日の夜、彼女は何度もトイレに行く羽目になった。
あのようなものを食べても腹痛を起こすだけで済んだことに、シンは驚きを感じていた。
(ちょっと悪いことをした気もするな・・明日、謝っておこうかな・・・)
ココロへの悪気を後悔しながら、シンは寝ることにした。
かわいらしい妖精との「萌え」な生活が過ごせるものだと、シンは喜びを膨らませていた。
しかし実際は、そんな喜ばしい生活ではなかった。
ブログ妖精ココロ。
シンはココロが、メイド級の家事をこなせるものだと思っていた。
しかし一緒に生活する日々が重なるに連れて、ココロの問題が浮き彫りとなってきた。
それはココロと一緒の生活を始めて、最初の月曜日の朝だった。
大学登校のため、シンは眼を覚ました。だが料理をする音を耳にして、彼はココロの部屋にあるキッチンに向かった。
そのキッチンではココロが料理を行っていた。箱が用意されていたことから、彼女は昼食の弁当を作っているのだと、シンは思った。
「おはよう、ココロちゃん。お弁当を作ってるの?」
シンがココロに挨拶をして、彼女の料理の具合を確かめた。だが眼にした異様な事態に、彼は戦慄を覚えた。
ココロが手にしているフライパンの中にあったのは、明らかに料理とはいえなかった。もはや調理の失敗、いや、料理そのものの次元を超えていた。
色は美味しさからかけ離れた不味さや毒気のある青紫。ビンや歯ブラシといった、どう煮ても焼いても食べられないものまで混じっていた。
「コ、ココロちゃん・・これは、何なの・・・?」
「えっと・・お弁当用の卵焼きを作ろうとしたのですが・・失敗しちゃったみたいです・・」
「ひとつ、聞いてもいいかな?・・ココロちゃんがやっているの、料理、だよね・・・?」
「はい。シンさんのためにお弁当を作ろうと思いまして・・」
シンの質問に、ココロが満面の笑みを浮かべて答える。その彼女の言葉に、シンは押し隠していた感情を爆発させた。
「ぜんっぜん料理じゃないって!これのどこが卵焼きなんだ!?どうやったらこんな美味しさのかけらもない青紫色に染め上がるんだ!?」
「えっ!?やっぱり失敗してたんですか!?」
「これのどこが成功なんだよ!?第一、どう煮ても焼いても食べられないものが混じってるじゃないか!ビンやら歯ブラシやら!」
「えっ!?食べられないんですか!?てっきり人間はそういうものを食べられるものかと思っていたのですが・・」
「ココロちゃん・・人間をバケモノみたいに思ってるでしょ・・・?」
ココロの言葉に対して、シンは愕然となっていた。ココロも失敗していると自覚しているため、困惑を浮かべるばかりだった。
結局、シンが登校する時間までにココロのお弁当作りが成功することはなかった。成功したのは、彼が登校してから1時間以上たってからのことだった。
シンが大学での講義を終えて、アルバイトに精を出していた頃、ココロは夕食作りに励んでいた。しかし包丁で材料を切っている最中に自分の指を傷つけてしまうなど、悪戦苦闘が続いていた。
そして調理に取り掛かってからしばらくして、シンがアルバイトから帰ってきた。
「おかえりなさい、シンさん♪今、夜ご飯を作っているところです♪」
挨拶をしてくるココロに、笑みをこぼすシン。だが彼のその笑みがすぐに顔から消える。
シンは今朝の調理を思い返していた。あの料理の失敗の連続を見せられては、不安を感じずにはいられなかった。
(だけど、ここで疑いを持ってしまったら、ココロちゃんに悪いし・・)
しかしシンはココロの優しさを信じることにした。
「ココロちゃん、何を作ってるの?」
「えっとですね・・カレーを作ろうとしたのですが・・その、あの・・・」
シンが訊ねると、ココロが答えを詰まらせる。視線を移した彼は、恐ろしいものを目の当たりにした。
それは明らかに失敗作だった。しかも想像を絶するほどの。
ひとつは皿の上に溶岩が盛られていた。これほどの熱に皿が溶けないのが不思議なくらいである。
もうひとつは完全に炭になっていて、元が何なのか全く分からない状態になっていた。形状が土偶のように見えるのが不気味だった。
「ココロちゃん・・これはいったい・・・!?」
「その、あの・・調理に失敗して、こんなことに・・・」
「どうしてこんなことになるんだよ!?いくら失敗したからって、こんなマグマができるなんておかしいだろ!」
「ですけど・・次元が違うと調整がむずかしいんですよ!」
「何の次元だよ!?料理にどんな次元の違いが出て来るんだよ!?」
ココロの言い訳にたまらず反論するシン。
「ココロちゃん、ちょっと聞くけど・・・作っている最中にちゃんと味見している・・・?」
「味見?してませんけど、何か問題でも?」
「味見しろ!ちゃんと味見しないから、いつも失敗ばかりするんじゃないか!」
「だってだって!シンさんのために作っているものですから、シンさんに1番に食べてほしいんです!ココロが口を挟んではいけないでしょう・・」
「僕のために精魂込めて作ったのがコレなのか!?僕を病院送りか即死させるつもりがないんだったら、ちゃんと味見しないとダメだって!」
シンはココロに言い放つと、失敗作のひとつを手にした。
「ちゃんと自分の腕前を自覚してもらうために、この失敗した料理を食べなさい。一口だけでも。」
「え、遠慮しておきます・・・」
「自分が“精魂込めて”作ったものだよね?自分が食べても美味なんだよね?少なくとも不味いなんてことはないよね?」
「これはシンさんのために作ったものです!ココロが食べるわけには・・!」
「僕のためだったら、僕がこうして勧めれば、食べないわけにいかないよね?」
「ダメです、ダメです、ダメです!絶対にダメです!」
頑なに拒否し続けるココロだが、シンは不気味に笑うばかりだった。
「本当にお願いします!それだけは、それだけはご勘弁を!」
「さぁ。自分のご自慢の味を存分に堪能するがいい。フフフフフ・・」
大きく首を横に振るココロだが、シンに届くことはなかった。直後、彼女の声にならない悲鳴が轟いた。
自分の失敗した料理をシンに食べさせられたココロ。その日の夜、彼女は何度もトイレに行く羽目になった。
あのようなものを食べても腹痛を起こすだけで済んだことに、シンは驚きを感じていた。
(ちょっと悪いことをした気もするな・・明日、謝っておこうかな・・・)
ココロへの悪気を後悔しながら、シンは寝ることにした。
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